結果発表

「公共交通オープンデータチャレンジ2024 - powered by Project LINKS -」の最終審査会・表彰式が2月15日に開催されました。

国内外より寄せられた数多くの応募の中から厳選された17件のファイナリストが、鮮やかなアイデアや技術力を駆使した作品を披露しました。

審査員たちが頭を悩ませた中、見事栄冠を手にした素晴らしい作品の数々をここに発表いたします。それぞれの作品名をクリックすることで、作品を閲覧またはダウンロードできます。ぜひご覧ください!

ご挨拶

坂村 健

公共交通オープンデータ協議会・会長
東京大学名誉教授
INIAD cHUB(東洋大学 情報連携学 学術実業連携機構)機構長

公共交通オープンデータ協議会(ODPT)は、多数の公共交通事業者、地方公共団体、ICT事業者、そして大学等の学術研究機関から構成される協議会です。2015年の設立以来、鉄道、バス、フェリー、航空、シェアサイクルの分野を中心に、日本の公共交通データのよりオープンな流通を目指して活動してきました。

公共交通オープンデータチャレンジは「インセンティブ・プライズ・コンペティション」として開始したアプリケーションコンテストで、これまでに東京をターゲットにした同様のコンテストを、東京オリンピック・パラリンピックの際に計4回開催してきたため、今回が通算5回目の開催となります。公共交通事業者の皆様から、時刻表やリアルタイムな運行状況といったデータを広く公開していただき、それらを活用したアプリケーションを一般の開発者から公募しました。

「インセンティブ・プライズ・コンペティション」とは、特定の課題解決に向けて明確な目標と賞金を設定し、幅広い参加者の参加を促し、作品を募る方式のコンペです。この方式により、従来の研究開発では生まれにくい多様なアイデアの創出や、幅広い専門知識の結集が促進されるということで、この方式は、民間のスペースシップ開発から、自動運転技術の進化まで、多くの分野で大きなイノベーション成果を上げています。

今回の「公共交通オープンデータチャレンジ2024 – powered by Project LINKS – 」には、大きく2つの新しい点があります。まず第1に、「東京」が外れ、日本全国を舞台としたコンテストとなったこと。第2に、国土交通省のProject L INKSとタイアップした企画となったことです。結果的に、25の鉄道事業者、71の路線バス事業者、226のコミュニティバス、23のフェリー事業者、5社の航空・空港関係事業者、2社のシェアサイクル事業者の協力を得ることができ、公共交通分野のコンテストとしては過去最大規模となりました。国内外から約500件のエントリーがあり、一次審査で合計17件のファイナリストを選考、最終審査会を経て受賞作品を決定いたしました。

公共交通オープンデータ協議会は、2025年で設立から10年の節目の年を迎えました。その間に、私たちの立ち上げた公共交通オープンデータセンターは、多数の交通事業者の皆様やICT事業者や開発者の皆様に活用されるデータプラットフォームに成長しました。公共交通データをオープンにすることで、乗換案内サービスでの活用はもちろん、さまざまな創意工夫、多様なデータとの組み合わせにより、新しい応用が切り開かれていきます。今回のチャレンジでも、様々な魅力的なアイデアが生み出されました。まさに、オープンイノベーションの可能性を、ともに探し出していただくのが、公共交通オープンデータチャレンジの意義だと考えています。

本チャレンジにご参加された開発者の皆様、データ提供にご協力をいただいた交通事業者の皆様や地方公共団体の皆様、そして日頃より我々の活動を支えていただいている多くの皆様に、厚く御礼申し上げます。今後とも、皆様方のご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。


内山 裕弥

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課/情報政策課 総括課長補佐
Project LINKS テクニカル・ディレクター
PLATEAU アドボケイト 2024
東京大学 工学系研究科 非常勤講師
東京大学 空間情報科学研究センター 協力研究員

「公共交通オープンデータチャレンジ2024 – powered by Project LINKS – 」にご参加いただきありがとうございました。

数多くの応募をいただき、新たなアイディアや素晴らしい技術に触れることができ、私自身も大変勉強になり、刺激を受けることができました。どうもありがとうございました。

また、公共交通の世界におけるオープンデータ推進とイノベーション創出の理念に共感いただき、データをご提供いただける事業者の皆様のご協力があればこそ、このようなチャレンジングな取組を実現することができます。

今回のチャレンジを契機として、GTFS等のデータをオープンに提供していただいた事業者の皆様にも改めて感謝申し上げます。

今回のチャレンジは、国土交通省が進める「Project LINKS」と連携し、公共交通オープンデータ協議会との共同主催として開催しました。

Project LINKSは、国土交通分野に存在する様々な情報の「データ化」と、これを活用したオープン・イノベーションの創出を進める取組です。

今回のチャレンジでは、GTFSをはじめとする様々な交通データだけでなく、まちづくりに関するデータや各種の統計データなどが積極的に活用されており、まさしく国土交通分野のデータから新たな価値が生まれる姿を目の当たりにさせていただきました。

また、作品自体も、交通利便を向上させるソリューションだけでなく、「交通空白」の解消や事業生産性の向上、まちづくりとの連携など、昨今の我が国における課題をとらえ、解決策を提示するものが多く、政策的な示唆にも富むものでした。

国土交通省では、引き続きGTFSなど交通情報の標準データの整備とその活用を推進していきます。今回の「チャレンジ」をきっかけに、さらなるイノベーションが生まれることを期待しています。

講評

坂村 健

公共交通オープンデータ協議会・会長
東京大学名誉教授
INIAD cHUB(東洋大学 情報連携学 学術実業連携機構)機構長

今回の「公共交通オープンデータチャレンジ2024 – powered b y P roject L INKS – 」は、私たちが主催したコンテストとしては、通算5回目となります。事前の想定を超えて素晴らしい作品が寄せられ、最終審査会の過程で急遽、準最優秀賞も設定することになりました。

厳正なる審査の結果、最優秀賞に選ばれたのは西片トコトコ探索会の皆様による「急がば漕げマップ」という作品です。公共交通オープンデータセンターが公開する鉄道関連のデータとシェアサイクル関連のデータに加え、さらに交通センサスのデータを組み合わせ、鉄道を使うよりも自転車を活用した方が良いルートを探すことができるものです。明確な課題設定があるほか、オープンデータの組み合わせの点でも優れた作品であり、最優秀賞に選ばれました。

続く準最優秀賞には、GTFSリアルタイムを活用し、駅や停留所など特定の場所に接近をした時に通知を行う「PoiCle / ぽいくる」と、列車ロケーションデータを活用して、踏切による停止確率を推定し可視化する「RailroadCrossFree」の2作品が選ばれました。どちらもリアルタイムデータの新しい活用方法を提案する、優れた作品だと思います。

その他、優秀賞には、「公共交通分析ツール - SPECTRA PROJECT」「GTFS box」「住みログ」「メトロファインダー」の4作品が選ばれました。審査員特別賞には、各審査員のイチオシの作品として、「Annelida 」「オンライン車内アナウンス AOIシステム」「CALOCULATE 」「ココいく?」の4作品が選ばれました。

今回のチャレンジでは、過去のチャレンジにも参加した開発者の皆様の新しい作品や、若い学生の皆様の作品も目立ち、公共交通オープンデータを応援する若いコミュニティの立ち上がりを実感しました。本チャレンジを通じて、公共交通オープンデータの新たな使い道が広がり、公共交通の利用者にとっても、また公共交通を支える事業者にとっても、より良い社会を創りだす一助となることを期待しています。


内山 裕弥

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課/情報政策課 総括課長補佐
Project LINKS テクニカル・ディレクター
PLATEAU アドボケイト 2024
東京大学 工学系研究科 非常勤講師
東京大学 空間情報科学研究センター 協力研究員

今回のチャレンジでは、大変多くの優秀な作品を応募いただき、審査に難儀しました。公共交通分野におけるオープンデータ化の推進と、地域交通やまちづくりにおける課題解決のためのイノベーション創出という国土交通省の観点から、私はとくに3つの作品に注目しました。

審査員特別賞に選定させていただいた「オンライン車内アナウンス AOIシステム」は、GTFSを用いてバス車内の音声案内をクラウド化したものです。バス車載システムの複雑さ、モダナイズが課題となっている現状に対し、軽量化と広告利用などによる新しい価値創造を達成しています。また、ノーコード管理ツールや自動音声生成の提供など、非常に高度なソリューションを実現しており、今後の発展も大いに期待されます。

次に「Project LINKS賞」としては、「SPECTRA PROJECT」と「OcRail」を選定いたしました。

「SPECTRA PROJECT」は、GTFSやGBFSに加え様々な統計情報などをWebGIS上で可視化するツールですが、特に注目すべきは、その軽量性とUXです。自治体職員などITに精通していないユーザーを想定し、ストレスなくデータ活用を導入できる本作品は、まさに今の地域交通に求められているソリューションだと感じました。

「OcRail」は、Project L INKSがJR貨物様と連携して提供した、GTFS形式の貨物列車データを活用した作品です。データ可視化の工夫に加え、仕様へのフィードバックを通じてデータ品質の向上にも貢献していただきました。

他にも、「Station Area Database Map」や「Annelida」をはじめ、多くの優れた作品に触れることができました。

いずれも、私が着目しているのは、実装力とUXの融合です。OSSの普及や大規模言語モデルにより「とりあえず動くものを作る」ことへのハードルは下がりましたが、「本当に使えるもの」を作ることの技術的な競争性は上がっています。今回のチャレンジでは、公共交通の世界における技術水準の高さを感じました。

「公共交通オープンデータから始まるイノベーションを」国土交通省では、引き続きオープンデータの拡充とイノベーション創出のための環境整備を進めていきます。

皆様のさらなる挑戦を期待しております。


伊藤 健一

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 MaaSユニット ユニットリーダー

公共交通は地域の生活者や、地域を訪れる方々の文化・経済をはじめ様々な活動を支える、重要な社会インフラであります。様々なモビリティから最も効率的なモビリティを選択して効率的に移動するケースもありますし、移動の最中に、音楽を聴いたり、動画を見たりしながら、くつろいだ時間をすごすこともあります。国籍を問わず、現代人とモビリティは密接な関係を築いています。

今回の「公共交通オープンデータチャレンジ2024 – powered by Project LINKS –」では、そのような現代人とモビリティとの関係性を反映し、日常の生活に価値を加える素晴らしいアイディア、ビジネスの種が作品として披露されました。中でも、「CALOCULATE」「丸亀市バス停SNSウェブアプリ『バスかめファン!』」「りちゃぶる(東京版)」の3つの作品は、コンテストの主眼であるデータ活用をベースに、それに加えて「日常の困りごと」を基点に考え、導き出された解決策や、日常生活と移動に新しい楽しみを加えることによる価値の創出がなされておりました。最新のテクノロジーを理解し活用しつつ、温故知新ともいうべき、ヒトならではのクリエイティビティが発揮されておりましたことを、大変嬉しく思います。

これまでの公共交通オープンデータチャレンジを通じて、交通系データをはじめとする様々なデータを活用し、多種多様なアイディアを創出された応募者の皆様の努力に感謝申し上げますともに、今後ますます顕在化していく様々な社会課題が、ここにご参加されました皆様の英知で解決され、新しい世の中が切り開かれ、皆様の未来が豊かになっていきますことを祈念いたします。


吉村 有司

東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授

「公共交通オープンデータチャレンジ2024 - powered by Project LINKS - 」の審査に初めて関わらせていただきました。事前に「公共交通のデータをもちいたハッカソン」とお聞きしていたので「交通分野の提案が多いのかな?」と思って会場に足を運んだところ、蓋を開けてみたら都市系やまちづくり系の提案が多くてびっくりしました。

最優秀賞に輝いた作品「急がば漕げマップ」は、電車と自転車の移動の選択をゲーム感覚で楽しむものに仕上がっていたし、「PoiCle / ぽいくる」は電車から海がちらりと見える場所を教えてくれるなど、都市を楽しむ視点がセンス良く盛り込まれていました。「Annelida」は最短ルート検索などとは違った視点で都市を分析する可視化の技術などに力を入れていました。

交通データを拠り所にしながらも、様々な分野の方々が多様な角度から多くの提案をしてくださっているのをみて、都市計画・まちづくりを専門とする研究者としてとても勇気をもらいました。

概して都市とはたくさんの人たちが住むところです。我々は集まって住むことに喜びを見出すために都市をつくってきました。そしてそのように高密度に集まって住む中においては、文化のカオリ高い生活の質が欠かせません。今後の都市、そして今後の都市デザインは、そのような市民生活の質を高めるためにこそデータを使っていくべきであり、それはデータの最適化とともに、データの最適化からはこぼれ落ちてしまうようなところにヒントがあるのではないでしょうか。

今回応募いただいた多数の提案のなかには、そのような問いを深められるキラリとひかる提案が数多くあったと思います。データを軸にしてみんなで街をつくっていく、みんなで街を育てていくという視点。

審査する我々の側も心躍る、そんな審査会であったことを記しておきます。


篠原 徳隆

株式会社ヴァル研究所 執行役員 MaaS事業部 プロデューサー

「公共交通オープンデータチャレンジ2024 - powered by Project LINKS - 」にご参加頂いた皆様、お疲れ様でした。

顕在課題として存在するもの、潜在課題を見つけ出そうとするもの、又はビジネスとしてこれからProduct/Market Fitを目指すものと、皆さん様々なアプローチからチャレンジされていることに刺激を受けました。

経路探索の観点では「急がば漕げマップ」「メトロファインダー」「ココいく?」は利用シチュエーションが共感できるもので、いかにわかりやすくユーザー課題を解決するかに取り組んだものでしたし、リアルタイムデータの観点でいえば「RailroadCrossFree」「PoiCle / ぽいくる」は、動的データを如何に「今」に活用するかというアイデアで気づきを得られました。

一方で、既にビジネスとして取り組まれている「オンライン⾞内アナウンス AOIシステム」は、オープンデータを利用したデジタル化(自動化/ 動的化)・ビジネス化の成功事例として期待できるものでした。

どれも魅力的なユーザーバリューを含んでおり、今後も続けて頂きたいと感じるものばかりです。

データをどう使ってどの様な価値に、どの様なユーザビリティに繋げるか、成功事例が世の中を牽引して行くかと思いますので、皆様のこれからに期待させて頂きたいです。

ありがとうございました。


別所 正博

INIAD(東洋大学情報連携学部)教授

多数の応募作品が寄せられた今回のチャレンジですが、見事入賞した作品についても、残念ながら入賞を逃した作品についても、非常に完成度の高い作品が多かったことに驚きました。過去4回の「東京公共交通オープンデータチャレンジ」では、まだアイデア段階といった作品も見受けられましたが、今回は細部まで作り込んである完成度の高い作品が大半を占めました。ChatGPTをはじめとした生成AIをアプリケーション開発において積極的に活用したという声もお聞きしており、今回の完成度の背景には、このような技術の発展もあったのだろうと思います。今後の技術進展とともに、公共交通データの活用もさらに進んでいくことを期待しています。

オープンデータチャレンジの醍醐味は、異なるデータの「組み合わせ」による、新たな課題解決の方法を見つけることにあると思います。最優秀賞の「急がば漕げマップ」における、シェアサイクルと鉄道のデータの組み合わせは、正攻法の素晴らしいアプローチだと思います。準最優秀賞の「PoiCle / ぽいくる」における、公共交通オープンデータと標高モデルを組み合わせた“ 海が見える場所の通知” も、素晴らしいアイデアだと思いました。他にも、多数の素晴らしい「組み合わせ」の着想があり、開発者の皆様の創意工夫を感じました。

また今回のチャレンジでは、世界的にも普及が進むGTFSのデータが多数公開されています。その中で、高品質なGTFSビューア「GTFS box 」がオープンソースで公開された点も印象に残りました。

今後のチャレンジでは、障がいのある方の移動支援に着目した作品が生み出されることも、個人的には大いに期待しています。最終審査会での「RailroadCrossFree」の発表の中で、歩行者移動支援への展開を考えているというコメントもありました。歩行空間ネットワークデータをはじめ、移動に関するバリアフリー関連情報のオープンデータ化も進展しています。ぜひ、公共交通オープンデータと、これらのデータも組み合わせ、より多くの方が便利に移動できる社会の実現につなげていただければと思います。

受賞作品

最優秀賞
急がば漕げマップ(西片トコトコ探索会)
準最優秀賞
PoiCle / ぽいくる(チームぽいくる)
RailroadCrossFree(金海英・正治咲良・佐藤彰洋)
優秀賞
公共交通分析ツール - SPECTRA PROJECT(SPECTRA PROJECT)
GTFS box(草薙昭彦)
住みログ(住みログ)
メトロファインダー(東真史)
審査員特別賞
Annelida(untitled0.)
オンライン車内アナウンス AOIシステム(株式会社ケイエムアドシステム)
CALOCULATE(同志社大学経済学部宮崎耕ゼミ「チームMIYAZAKI」)
ココいく?(OTTOP オフ会)
特別賞
JR東日本賞
丸⻲市バス停SNSウェブアプリ 「バスかめファン!」(三菱地所設計 + Pacific Spatial Solutions)
りちゃぶる (東京版)(横関倖多・後藤晴)
Project LINKS賞
OcRail(久田智之)
公共交通分析ツール - SPECTRA PROJECT(SPECTRA PROJECT)
INIAD賞
Annelida(untitled0.)
おでかけ提案アプリ まちマッチング(高木健太)
Station Area Database Map(臼井健祐)
LeafLane 〜地球に優しいナビ〜(Nam Pham)